目次



日銀短観の正式名称は「全国企業短期経済観測調査」といい、日本銀行が年に4回全国1万社あまりの企業にアンケート調査を実施し作成しています。最大の特徴はそのサンプル数の多さですが、特に重要視されている理由は99%という企業の回答率の高さにあります。このような総合的に企業を包括した調査は他になく、日銀による緻密な作業ゆえの信頼を得てきたというわけです。



アンケートではマクロ環境の現状・先行きといった項目に加え、各社の売上高や収益・設備投資額といった企業活動全般に関して調査されています。前者を「企業心理」、後者を「経営内容」と大別し統計値が算出されます。

特に注目されるのが「企業心理」を指数化した業況判断指数、通称DI(Diffusion Index)です。
DIは、景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の値を引いた数字です。
DIの数値は50が横ばいを示し、50を上回ると「好景気」、反対に50を下回ると「不景気」と感じている企業が多いことを意味します。調査では、大企業と中小企業、製造業と非製造業などで分けて結果が公表されます。


ここでなぜ「企業心理」を示すDIが注目されるのかというと、経営者の心理は景気動向に大きな影響力を持つからです。もし多くの経営者が景気に対して前向きならば、彼らは積極的な投資や雇用の増加を進めるでしょう。そして短観を通してその動きを感じ取った投資家は企業の株式に投資を行い、資本市場にも活気が生まれます。

一方で、経営者が今後の景気に後向き姿勢を強めると、ビジネスに保守的になり投資は手控えられ、経済は更に減速していく事が予想されます。

このように企業心理を集約した短観は、経済動向を掴む上で有効な指標の一つと見なされています。



2018年3月の短観(4月2日発表)では、大企業製造業の景況感が8期振りに悪化し、市場予想を下回る結果となった事から日経平均株価は下落する展開となりました。

しかし設備投資は高水準を維持し、全産業DIも前期のペースで横ばいの結果となり景況感の大きな衰えは感じられてはいません。

今回の短観で最も注目が集まった企業の想定為替レート、つまり企業は今後為替がどのように動くと見ているかを示す値は1ドル=109円台でした。足元の為替が106円台であることから、もし仮に現在の為替水準が維持されれば企業の収益を下押しする可能性があるという事です。

この結果を踏まえて、市場は貿易戦争の悪化や更なるドル安をリスク要因として材料視していくでしょう。
日銀短観は国内の経済環境を測るものさしでもある一方で、投資家の視点にも大きな影響力を持つ重要な指標であることが分かります。


関連する記事

著者